つい先日の全銀システム障害。モヤモヤしてしまうブログ記事を見てしまいました。
専門家でもない個人のブログに私見として書いてあったことなので、そんなことまともに受ける必要なんてないんですけどね。
ブログランキング上位の人がそういう短絡的なこと書くと、知らん人は影響されそうだなぁと思って、つい書きたくなってしまいました。
大昔、私は銀行システムの開発に携わっていました。
なので、今回の全銀システム障害や今までのみずほ銀行関連のシステム障害についても、現場の修羅場を想像して大いに同情しています。
あのまま関わり続けていたら今回の件にも巻き込まれていたかもしれませんし、現在もシステム開発に携わっているので他人事ではありません。
例えばの話で書いてはありましたが、
- 振り込んだお金が銀行システム障害のせいで消えてしまうかもしれない
- デジタルだから一瞬で消えてしまう
- システム障害が繰り返されたらいつか完全に止まってしまうのではないか
などなど。
いやぁ...そんなこと百も承知でバックアップシステムが構築されてるわけですよね。まぁ今回のはバックアップシステムもうまく機能してなかったらしいですが...。
完全に止まったら、みたいなシステムになっている訳ないでしょう。(大地震が多発して、ありとあらゆる火山が噴火して、みたいな大災害が起こればもちろん停止するし、その前に人間もほぼ全滅しますね)
他の多くの金融機関と同様に、全銀システムは東京と大阪で冗長化されています。
もちろん災害等を考慮してのことで、東日本・西日本でバックアップ体制を取っていて、データセンター自体も地理的に地盤が強い場所が選定されています。もちろん他にもバックアップ手段は考えられているはずです。
さらに振込は振込先・振込元があるわけで、振込先でデータが取得できなかったとしても、振込元にデータが残っていますから、保証のしようはいくらでもあるわけです。
金融危機が起こった際、たしかに預金の引き出し制限はかかる可能性はあります。
しかし、預金保険機構による、預金保険制度(通称「預保」)という預金者を保護する制度があります。
ご存知とは思いますが改めて、
- 利息がつく預金は元本1000万円まで+その利息が保護される ・・・普通預金、定期預金 など
- 利息がつかない預金は全額保護される ・・・当座預金、無利息型普通預金 などの決済用預金
という制度です。
全額保護したいなら、決済用預金を開設すればいいですが、当座預金は一般の人が簡単に開設できる口座じゃありませんし、いかに資産運用するかというこのご時世で無利息の普通預金を開設するメリットも一般庶民には無いでしょう。ということで大抵の人は元本1000万円までとその利息が保証されるわけです。
日本という国自体が破綻せず、この制度が機能している限りは銀行に預けている資産がゼロになることはないでしょう。
まぁ、結局そのブログで言いたいことは、預金が引き出せないと困ることが起きるから手持ち現金も持っておこうね、
ってことなんですけど、妙に不安を煽るようなことが羅列してあるのでモヤモヤしてしまいました。
銀行システム障害によって確かに実害を受けている人もいますが、障害を起こしたくて起こしているわけでは当然ありません。
本番さながらのリハーサルを何か月も、ときには何年もかけて、何度も行います。当然他行や過去の障害事例も参考にして。
それでも起こってしまう。
それほど今の金融システムは複雑なんですよねぇ。
金融システムの現場はいくつか経験していますが、NTTデータの現場は本当に優秀な人たちが集まっていました(自分はペーペーでしたが)。
私が所属していた開発グループのリーダーが特に仕事に対する姿勢やその人の仕事自体も素晴らしく、それでいて人望も厚く部下にも慕われていて、「こんな優秀な人がいるのか。NTTデータってやっぱすごいな」と感嘆したのを今でも覚えています。人によるかもしれませんが、大規模プロジェクトを回すには優秀でなければ務まりませんからね。
今回の全銀システムでも粒ぞろいの人材が集まっているはずですが、恐らく障害が発生した現場では阿鼻叫喚が飛び交い、責任者は様々なところから叩かれ、無理難題をぶつけられ、追い詰められている(いた)のではないでしょうか。今朝 (2023.10.12) ようやく復旧したようですが、残作業でまだまだ修羅場は続いていると思います。
まずはお疲れ様でした!と言ってあげたいです。日本は開発者への評価が低過ぎ。
というわけで、現場を少しでも経験したことがある身として、あまりにも適当なことが書かれているのを見過ごせずについつい。
まぁただの一般人ブロガーのいうことなんて軽く流せばいいんでしょうけどね。
私のような見方を発信するのもいいかなって思って書きました。
ではでは